Sunday, September 13, 2015

#1

 私は平均的な人間ではない。私は少し、精神的な逸脱があるようだ。もっとも、私の指は五本あり、目はふたつだ。だから、あなたが私を通りで見かけたところで、何も感じることはないだろう。しかしもしも、あなたが極端に繊細なセンスを持っているとしたら、ある違和感をもつだろう。そうして、十歩ほど歩いたところで、振り返るだろう。何かが違う。しかし、何が違うのかわからない――。

 あなたの脳の高度な処理技術が、背景と私を切り離すだろう。私は周囲の背景から浮かび上がったように見えるだろう。あなたは距離感を喪失する。背を向けた私との距離が、万ほど離れているように見えるし、反対に、肌の熱を感じるほどに近く感じる。あなたは、しかし、そのまま歩き去ってしまうだろう。大したことではない。たまに、いる。どんな場所にもそぐわない人間が。

 あなたは私を正しく判断した。そうして、取り立てて大した問題ではないとした。それがいい。あなたの防衛本能が、あなたを守った。人は、あまりに巨大な恐怖に対しては、思考することを辞めなければならない。脳のはたらきは情報処理だが、それは情報をより細分化しデータベース化するというよりも、不要な情報を「捨てる」ことにある、という説がある。私をあなたは無視をした。それはただしい。それによって、あなたは今日も食事を採れるし、眠りに入ることができる。

 しかし、少しの悪夢は見るかもしれない。夢とは人間にとって、不思議そのものだ。私たちは起きている時間を、眠っている時間と比較にならないほど評価している。夢は、覚醒している時間のお荷物、ある錯誤、なんのためにあるのかわからない盲腸のようなものと思われている。もっとも、フロイトのように、夢に治療的な価値を見つけようとした人もあるけれども……。

 ともあれ、道ですれ違っただけの人間、それが夢に出てきて、あなたを悩ませることがあるかもしれない。実際、この私という人間は、それだけ考慮に足る人間なのだ。私はあなたの心理を理解する。しかしこれは一方向的な愛だ。あなたは私の心理を理解することはないだろうから。