Saturday, December 12, 2015

ヤブ医者

私「私は意志の弱い人間です。今日も酒を飲んでしまいました。これで、連続飲酒をして、半年になります。毎日、おいしいものを食べています。鶏肉や豚肉と、地産の野菜を合わせて……。ときにはインスタントラーメンや、フライドポテトのようなものも食べます。おいしいものと、おいしいお酒を飲んでいます。

それで、私は飲みすぎてしまうのです。今日は飲みたくない、と思っていても、夕方くらいになると、寄る辺のない不安に襲われて、大気が真空になったような気がして、私は徐々に体中の毛穴から、自分のたましいのようなものが、蒸散してしまうような気がして、私はたまらなくなり、酒を飲むのです。酒を飲めば、こうした発作は、落ち着きます。それで安寧へたどり着くのです。体は温かくなって、また体が活発に生物活動をするようになるのです。すべてがうまくいって、私は十全とするのです。先生、助けてくださいますか。私は、酒を飲み続けた果ての苦しい病や、思考の衰えが恐ろしいのです。」

Dr「もしかしたらあなたは、お酒などこの世になければ、と思っていませんか。あなたはこう想像する。私がもしも酒を飲んでいなかったら……。愚かな考えです。あなたは、お酒を飲むように生まれた。そうして、お酒を飲まないようなあなたは、存在しないのです。私は断言しますが、あなたがどんな時代に生まれ変わっても、あなたはお酒を飲むでしょう。なぜって、人類の歴史は酒の歴史とも言えるのですからね。聖書にも、葡萄酒はでてきます。伝道者の書9章7節を引いてみましょう――「愉快にぶどう酒を飲め」。もしも体毛が薄かったら?もしもにきびがなかったら?もしも宝くじに当たったら?もしもクレオパトラの鼻が低かったら?くだらない消費者根性です。あなたはなぜ、苦しい病や思考衰弱がいけないと思うのですか?人はみな、事故や自殺をまぬがれても、最後はそこへ行きつくのです。あなたは、人生に苦しんでいるし、生きるのに倦んでいる。これはアルコール中毒者の必要条件でもあります。では、あなたの感覚を麻痺させ、喜びを与え、生きることを可能にしてくれるアルコールを、どうして忌避する必要があるのでしょう。お酒とうまく付き合うことです。そうして、諦めることです。あなたは、諦めることを知る必要があるのです。何もかも諦めてしまえば、しだいに酒の方から離れるでしょう。」